秋の夜長。
彼女は窓の近くのソファーでクッションを抱えてもたれかかっている。
テレビも部屋のメインの照明も消して、フロアライトをひとつつけている。
外からはクルマの通る音が微かに聞こえてくる。
その音に混じって鼻をすするような音が聞こえる。
サイドテーブルとして使っている木の丸椅子の上には白いマグカップがのっている。
中の琥珀色の液体から、ほのかに湯気が立ちのぼっている。
「ふぅー・・・。」
彼女はひとつため息をつくとマグカップに手を伸ばした。
カップを抱えるように持ち、顔を近づけると強く芳醇な香りがした。
紅茶にウイスキーを入れてあるのだ。
その香りごと彼女は液体を口に含んで、そして飲み下した。
「くぅー。五臓六腑に染みわたるねぇー!」
傍らからティッシュを何枚か雑につかみとると豪快に鼻をかみ、勢い良く立ち上って、その勢いでくずかごに丸めて放り込んだ。
くずかごにシュートが決まるのを確認するとくっと拳を小さく握りしめ、洗面所に消えていった。
水音がした後、鼻で笑うような声が聞こえた。
恐らく、鏡に映った自分の顔の酷さを笑ったのだろう。
彼女はもう大丈夫だ。